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英語の冒険 The Adventure of English

「英語」それは私にお金をかけさせ、時間をかけさせ、試験にストレスを感じさせた12歳の時に悪魔のように現れた言葉だ。日本語をびっちり覚えて歳が2桁になってから英語の勉強をし始めた日本人の中には英語アレルギーという症状が出てしまう人もいる。英語を聞いていると眠くなったり、長文を見ると目眩がしたりする拒否反応だ。

英語に苦手意識があると帰国子女に憧れたり、英語環境に生まれ育ったら良かったのにと思っているかも知れない。受験や就職のために(しかたなく?)英語を勉強している人はペラペラにならなくてもいいから何とか英検やTOEICの資格が欲しいだろう。私も英語が好きかと聞かれれば、ずいぶん英語のために搾取されてきたので純粋に好きとはどうしても言えない。

英語を教えたり習ったりしている人は、メルヴィン・ブラッグ(著)、三川基好(訳)の『英語の冒険』を読んで欲しい。本物の英語を学びに留学先はイギリスにする、オーストラリアじゃなまっちゃうしアメリカだとちゃんとした文法の英語は学べない...そんなことも言われている英語の本家イギリス人PEN賞受賞作家の語る英語の歴史だ。しかし擬人化した英語の冒険物語のようで言語学の授業を受けるよりも楽しめる。

海を超えて暴力と英語(のもとになった言葉)に征服された最初の国がイギリスだった。だから私が英語に苦しめられるずっと昔にイギリスに住んでいた人々は英語に苦しめられた。15万人しか話者のいない英語が15億人が使う言語になるまでは、国際語と呼ばれるようなものでもなくキリスト教世界において神の言葉であるラテン語が使えない下民の言葉だった。そもそもローマ教皇(法王)も英語の聖書なんてものは許さなかった。ローマ・カトリックをもの凄い裏切り方で改宗したヘンリー八世も初めは異端書物としてこそこそと出回った英語の聖書を没収の命令を出していた。

免罪符のあたりがそうだが、腐敗した教会が聖典とは全く関係のないことをしていてもラテン語の分からない英語話者は聖職者のすることを信じるしかなかった。結局そんなことばかりしていたので聖職者の中にもラテン語を解さぬ者が出てきて、ラテン語を勉強せずともわかる言葉(英語)で聖書を読みたい民衆の熱で翻訳者が現れ何万部が印刷された。トマス・モアのような権威筋は「炎のごとき聖書の言葉を農夫の言葉に変えた」と非難したが、手遅れだった。英語は知識人の言葉ではなく教養のない人の話す言葉だったのだ。

「英語はラテン語からできた」と思っている人も多いが、英語は元々語彙がもの凄く少なかったので数多くの言葉をラテン語に限らず外国語から取り入れている。日本人がかっこつけて英語を取り込んで話すように、フランス語などの方がずっとおしゃれだと考えられていたので既にある語彙もわざわざフランス語風やギリシア語風に変化してみた。またラテン語の衰退でエリートが英語を話すようになると古英語を駆逐するようにギリシア・ラテン語風の英語に置き換えていった。単語の暗記が大変な英語だが、新しい言葉をどんどん作らなければならないほど貧弱だった。英語の歴史は(もちろんその過程で消えた単語もあるが)現在辞書に載っている単語がどのように増えたのかでもある。

イギリス人がアメリカに渡ってから英語は(国際語と呼ぶよりも)言葉が通じない者同士の共通語になった。黒人奴隷がアフリカから連れてこられたとき数百とも言われる様々な言葉を話す黒人にとって黒人語という共通の言葉がなかった。黒人達はこれまた単語を増幅させたり文法を変えたりしながら新しい英語を作っていった。下品な英語(でも時事的で核心をついた内容)で知られるサウスパークでは黒人が新しい言葉を作ると白人が盗むと言われていた。

日本は英語教育を義務づけているにも関わらず英語を操ることができない人が多い。当たり前だ、一生使わない必要もない人にまで教えているからだ。使わない言葉は忘れる。年齢が2桁になってから耳や舌まで英語を覚えるのは難しい。英語が命綱の環境へ突き落とせば飛躍的に伸びるが、週に1回程度の習い事では余程の動機がなければなかなかうまくならない。

日本人は敗戦の影響(負けたことがほとんどなかったのでショックは大きかった)で英語をどうにも崇高なものに思っている傾向がある。何年も日本に住んでるのに偉そうに英語を話す人相手にも、英語を話せないことは恥ずかしいと言わんばかりに一生懸命英語で対応する。世界各国の代表が各国のマスコミ相手に英語で話しているのが普通になったとはいえ英語が話せないことが劣っているということではない。それでも英語できるようになりたい!と思うなら『英語の冒険』を読んで英語がどういう性格を持った言語なのかを知ると勉強しやすくなる。英語の旅を知れば「英語が難解な高級な言葉」と思わずに、肩に力を入れずに英語に取り組めるかもしれない。

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