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名将たちの教育論 2

第1章 軍人たちの教育システム

第2節 軍隊教育の目的と内容

 人々の生活の中に「力」は先験的に存在するし、また、無形的、有形的「力」なくして人々は生きて行けない。だから「力の使い方」の教育がなされて当然である。それなのに日本では、その教育がないのだ。

 人々が無教育のまま力を使えば、エネルギーの無駄使いになるし、過剰な殺傷、破壊を招く。人々の力のベクトルは、それぞれ思い思いの方向に動くので「力の行使の原則」という指針がなければ、衝突は避けられない。

 衝突を嫌ってすべてのベクトルの方向を一定にすることは全体主義にほかならない。ベクトルのない世界は死の世界である。 <3> 軍事を教育することは、この力の動きと働きをいかに「制御」するかを教えることである。戦争を教育するには、二つの目的がある。

 一つは「勝利の獲得」であり、他は「社会科学としての戦争」である。

軍隊における教育の目的は、"勝利の獲得"であることは間違いない。その教育の内容は、

(1) 強い軍隊の育成
ア.戦闘ドクトリン
イ.軍隊の編制・装備
ウ.戦略・戦術と指揮官の指揮・統率
エ.部隊の練成、団結、規律、士気

(2) "軍人らしさ"の培養

(3) 戦力供給源の育成

である。

これに対して、社会科学としての戦争の教育は

(1) 戦争の原因
(2) 戦争の役割「戦争とは何ぞや?」
(3) 軍隊の効用と限界
(4) 戦争の制御

 などである。ギリシャの神にもヘラクレスのような守護神が居れば、仏陀にも二天王や金剛力士のような数々の守護神がいる。世界の神々は、人間世界を「百鬼夜行」と認識している。したがって軍隊の本質は人間の「守護神」である。守護神に求められる資質は

(1) 強く優しいこと
(2) 自己犠牲
(3) 公正

 である。これが軍隊教育の核心部分だから、教育は二つになる。それは

(1) 善良な人材育成
(2) 強く優しい有能な人材

 アナポリス海軍兵学校はイギリスの王立海軍大学校の考え方を受け継いでいた。その教育目的は「海軍勤務において倫理、精神、体力に優れた職業士官を養成すること」である。

そしてその教育内容の優先順位は

第一、 艦長としての人格
第二、 船乗り魂(潮っ気)
第三、 体育
第四、 知育

 アメリカ各州の軍事高校(Military Academy)の教育方針は「軍人らしくあれ、紳士のように行動し、学者のごとく勉強せよ」

 この二つの教育方針をまとめると、それは第一に「らしく」、第二に「徳操」、第三が「知育および技育」で「体育」は共通事項ということになる。

 もし、これを日本の教育構想に取り入れるなら第一に大和心が来る。

 戦争は第1節において述べた通り、言葉や文章で容易に教えることができない暗黙知の領域にある不文律の世界であり、戦場は「状況の4分の三は霧の中」でかつ「予期しない摩擦の坩堝」だから、1938年のアメリカ軍砲兵記事において砲兵のマニュアルの第一条は「将兵は何ものにも囚われずに自分で考えて行動せよ。マニュアルは参考書に過ぎない」と大前提が書かれている。もちろん戦時には法律も超える。「愚鈍、官僚的規則主義、標語の3つほど人間の思考を虚しくするものはない。この三悪は自力で考えることを止めてしまうのだ」(「一兵士の思考」フォン・ゼークト大将、1930年)

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